咳と痰のブログ

Cough& Phlegm Blog

発熱が出たら新型コロナ?どれだけ疑わしいのか?

発熱や咳、喉痛、鼻水があったら、「もしかしたら新型コロナ※1かも?」と心配になりますよね。でも風邪かも?花粉症かも?いったいどの程度新型コロナを疑えばいいのでしょうか?

呼吸器内科専門医、感染症専門医からみた「発熱した際の考え方」を述べてみようと思います。

新型コロナの「症状は多彩(たさい)」

新型コロナの症状は発熱、寒気、咽頭痛、鼻水、関節痛・筋肉痛、下痢、倦怠感などの感冒やインフルエンザによく似た症状で発症します。無症状で経過する症例もある一方で、肺炎を合併し、重症化し死亡することもあります。また血栓症や皮膚症状などの後遺症もあります。「新型コロナは症状が多彩」であり、発症早期(1~3日目)に症状で新型コロナを診断することは殆ど無理と言われます。ではどのように新型コロナを疑うのでしょうか?

新型コロナは「インフルエンザ様症状」で発症、「重症例の経過はおんなじ(いっしょ)」

高熱や倦怠感、筋肉痛などの「インフルエンザ様症状」を来すことが多い※2とされ、鼻炎のみの症例や下痢だけの症例は比較的可能性は低いと考えられます。軽症例80%の多くは軽快しますが、一部の症例で肺炎合併20%~(発症4~8日目)し、集中治療室(ICU)に入室するほど重症化5%(9~10日目)する症例があります。「重症した症例の経過はおんなじ(いっしょ)」なので、

発症4~8日目に「息苦しい」「肩呼吸をしていることがある」「倦怠感が強い」など重症化の兆候を見逃さないことが大切です。また鼻水や鼻閉などがないのに嗅覚障害がある症例では、PCR検査陽性率は非常に高く(80%?∼)、「嗅覚障害」は特徴的と言えます。

どのような症例で新型コロナを疑うのでしょうか?

症状で新型コロナを区別するのはしばしば困難ですが、次のような場合は新型コロナの検査を積極的に考慮します。

新型コロナ患者に接触歴がある

PCR陽性率の高い流行地域

③高齢者や基礎疾患(糖尿病や肝腎不全、COPD等)のある症例

発症早期(1~3日目)で症状の強い症例「インフルエンザ様症状」

発症4~8日目に「息苦しい」「肩呼吸」「倦怠感が強い」

嗅覚・味覚障害のある症例

 

2週間以内に新型コロナ患者と接触歴がある症例は可能性が高いと思われます。「マスクなしでの外出」「マスクなしで会食やカラオケ」「マスクなしで車内」での感染例が散見され、「三密を避ける」と共に「マスクなしでは距離をとる、会話は避ける」といった注意が必要です、「マスクなし」とはウイルスの侵入経路(鼻や口)を開いた状態ですので「会食」や「会話」を避ける配慮が大切です。

接触歴がない場合はPCR陽性率を参考にします。PCR検査をされた症例はある程度新型コロナを疑われた方々なので、例えばその陽性率が5%程度ならば、感冒症状を来した患者さんが新型コロナである可能性は5%を超えることはないと思われます。新型コロナは比較的症状の重いインフルエンザ様症状が多いとされているので、微熱で軽症例では2-3%程度の陽性率しか期待出来ないと言えます。すなわち新型コロナでない可能性は97-98%程度と予想されます。緊急事態宣言が発令された1月初旬のPCR/抗原陽性率は10-15%と明らかに高くなり、特に高熱患者での陽性率は更に高かったです。

高齢者や基礎疾患のある症例は新型コロナである可能性が高いとは言えませんが、新型コロナに罹患した場合は重症化する可能性が高いので特に注意を要します。

④⑤⑥新型コロナの発症早期の症状はインフルエンザや感冒と区別は非常に困難です。重症例を早期に診断するため「発症早期は重症例(インフルエンザ様症状)」を、また「肺炎合併例(4~8日目)」「嗅覚障害(2~9日目)」は比較的特徴的なので、このような症例は積極的にPCR/抗原検査をします。一方新型コロナウイルスの感染性は発症7~10日目でなくなることがわかっており、重症化も9~10日目なので、「8~10日ほど経過して比較的元気であれば以降新型コロナを移すことも、それで亡くなることもほとんどない」とも言えます。

診断はPCRや抗原検査で確定します

新型コロナウイルスの確定診断は以下の検査でなされます。

①PCR検査:確定診断のための標準的検査(ゴールドスタンダード)

         検査の所要時間1~3日間

②抗原検査:PCR検査と一致率が90%(2~9日目)

         検査の所要時間15分

                    (①は鼻咽腔・唾液検体、②は鼻腔検体)

いずれの検査も特異度は高く陽性だった場合は殆ど間違いはありません(つまり陽性ならば新型コロナがほぼ確実)が、感度はせいぜい70%程度で陰性だからと言っても否定出来ません。偽陰性※3になる主な理由は検査で採取した場所(鼻腔の一部)にウイルスが存在しなければ陽性にならないからです。

※1.医学的な正式名称でいうと新型コロナウイルスは「SARS-Cov-2」、新型コロナウイルスによる発症した疾患名は「COVID-19」と称しますが、今回は一般の方々で広く知られている「新型コロナ」と記載します。

 

※2.厳密にいうと新型コロナは無症状~重症まで来すので軽症例だからといって”新型コロナではない”とは言えません。しかしPCR陽性率が高くない地域では上述の考え方から可能性はあまり高くはないと思われます。PCR陽性率が非常に高い地域では感冒やインフルエンザ様症状を来した症例で新型コロナの可能性は上昇します。

 

※3.偽陰性とは「本来は陽性になるべき、すなわち新型コロナであるのに検査上”誤って陰性”になってしまった」ことを言います。新型コロナのウイルスは鼻咽腔に多く存在しますが、たまたま検体を採取した場所にウイルスが少なく検査が陽性にならなかったことが主な原因と思われています。

新型コロナワクチンを接種しよう!

新型コロナのワクチンは接種すべきでしょうか?有効率は非常に高くインフルエンザワクチンよりずっと高く(95%vs50%)、驚くべき程です。国民の75%がワクチン接種をすれば「集団免疫」を獲得できると思われ、新型コロナの流行が抑えられることが期待されています。

一方副作用を心配される方も少なくないと思います。接種部位や全身の何らかの反応(倦怠感や頭痛、筋肉痛等)は見られることが少なくないようですが殆どの症例では数日以内に軽快しているようです。重篤な副作用であるアナフィラキシーショックは10万人に一人程度とインフルエンザワクチンより頻度が高いとされますが、麻疹などの生ワクチンのそれと同程度の頻度であり、接種後30分程病院内で観察すれば十分対応可能かと思われます。2月中旬から日本でも医療関係者へのワクチン接種が始まるので副反応の状況も明らかになっていくと思います。新型コロナが高齢者にかかるとその死亡率は高く、町田市でもつつがなく高齢者に十分なワクチン接種が進むよう医師会や保健所が主導で尽力しているところです。歴史に残る新型コロナの大流行を過去のものにするには一人一人がワクチンを接種をすることが大切だと思います。

※新型コロナウイルスのワクチンの詳細は下記サイトを参考にしてください。

関連記事