治らない肺炎で紹介されたけど…
治りづらい、繰り返す病気は、患者さんを困らせます。
今回は”治らない肺炎”で紹介された症例をみてみます。
患者 | 80歳代 男性 |
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主訴 | 治らない肺炎 |
既往歴 | 2016年誤嚥性肺炎で入院 |
経過 |
入院以後風邪(かぜ)や肺炎を繰り返していた。2018年3月咳痰来し前医で誤嚥性肺炎と診断されたが改善なく、当院紹介された。 前医胸部CTの一部から結核を疑い、結核疑いで同日他院に紹介入院した。 |
結果 | 後日結核菌が証明され結核専門病院に転院した。 |
まとめ |
誤嚥性肺炎※1も”治らない肺炎”となりうるが、一方で肺結核もなりうる。決してありふれた病気ではありませんが、“治らない肺炎”では結核※2の可能性も念頭に置く必要があります。 |
診断
肺結核
考察
- なぜ誤嚥性肺炎と疑われたのか?
本例は誤嚥性肺炎疑いで紹介されました。誤嚥性肺炎は繰り返しやすく、そのたび体力低下も来すのでしばしば難治性になります。本例もそのような経緯から疑われたのだと思います。しかし一方では高齢者や体力低下した際に起こりやすいのも結核であり、“治らない肺炎”や“長引く咳痰”では結核の可能性も念頭に置かねばなりません。
- 結核はありふれた病気ではありませんが、決して過去の病気ではありません
本例のように“治らない肺炎や”長引く咳痰“などでは忘れてはならない病気であり、適宜胸部X線で確認することが大切です。私が町田市民病院で診療していたころも年間10例程度はみられました。
※1.誤嚥性肺炎とは?
脳卒中や高齢者では嚥下機能(えんげきのう)が低下していることがあります。嚥下がうまくいかないために、食事や水を飲みこむ際などに口腔内の雑菌が誤って肺に落ち込むことがあり、肺炎を起こすことがあります。これを”誤嚥性肺炎”といいます。誤嚥性肺炎は繰り返しやすく、しばしば難治性になります。
※2.結核の早期診断は大切
結核といえば「伝染病」として有名です。伝染予防のためには早期発見が大切です。2週間以上長引く咳痰では胸部レントゲンで結核などがないことを確認することが大切です。本例では初診時すぐに結核を疑い、他の患者さんに伝染しないよう配慮し別室で診療したので当院での伝染は心配ありません。