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梅雨になって咳がひどくなった…夜寝られない。咳が連続して吐きそうになる…

今年の梅雨は台風が続き、降水量も多く体調を崩す方が多くみられます。天候と共に悪化する頭痛やめまい※3、関節痛、咳喘息や喘息※1などがあります。典型的な症例を紹介します。

患者 20歳代 女性
主訴 4月から咳、6月に咳と痰からみがひどくなった
既往歴 小児喘息
経過

2年前から4~5月に咳が持続するようになった。

今年も4月に咳が出現し、6月咳と痰からみが続くため、当院を受診した。

咳は昼間少ないが、夜間に悪化して寝られなくなった。

時に咳が連続して吐きそうになることがあった。

結果 咳喘息を疑い、喘息治療薬で改善した。
まとめ

梅雨や台風等で悪化する喘息や咳喘息の方は少なくありません。胸部レントゲンは肺炎や結核などはなく、喘息治療薬で改善したことで咳喘息と診断しました。

風邪症状がなく、例年同じ時期に咳が続く、天候悪化や梅雨で悪化※2したことは咳喘息を疑います。

咳喘息を疑う症状や所見

• 咳喘息は“気道過敏※1(きどうかびん)”のため、温度差や湿度、気圧変化、カゼ、花粉、ホコリ等の刺激で過敏に症状が悪化します。
• 「夜間に悪化」「例年同じ時期に悪化」も喘息や咳喘息でしばしばみられます。
• 2か月長引く咳なのに胸レントゲン異常なし

診断

喘息治療薬は喘息以外の咳には効きません。「他の疾患はない」、「喘息治療薬が効く」ことで”咳喘息”と診断しました。

考察

  • 鎮咳薬(ちんがいやく)は喘息に効かないの?

    カゼや気管支炎などでは咳をすることでバイ菌を排出しています。気道にある咳受容体(せきじゅようたい)で感じて、咳をすることでバイ菌を排出しています。鎮咳薬(ちんがいやく)、いわゆる咳止め薬は気道の咳受容体をブロックすることで咳を止めます。
    一方喘息や咳喘息では気道閉塞が原因なので、鎮咳薬は効きません。治療は気道を拡げる薬、気管支拡張薬(きかんしかくちょうやく)になります。気管支拡張薬は咳受容体に働かないので“喘息、咳喘息以外の咳には効かない”ことになります。咳喘息は「喘息治療薬が効く」ことで診断されます。

  • 咳喘息の診断は?

    カゼのあとに咳が残ることは少なくありません。また風邪症状もないのに咳が長引くこともしばしばみられます。しかも鎮咳薬や抗菌薬なども効かず、胸部レントゲンや肺活量検査、血液検査などの検査で異常はありません。このような例に喘息治療薬が効くことはかなり多く、“喘息では?”となりますが、ヒューヒュー、ゼイゼイしません。喘息薬が効くのに喘息みたいにゼイゼイしない、だから“咳喘息”といわれるようになりました。咳喘息はこのように「喘息薬だけが効く」、「他の疾患でない」ことが診断になります。

※1.咳喘息の気道過敏とは?
咳喘息は喘息と同様に“気道過敏”が原因といわれます。気道に入る空気の変化や異物に過敏に反応します。例えば冷たい空気や湿気、気圧の変化、ホコリや花粉など、それほど害のないと思われるものに過敏に反応するのです。過敏症(アレルギー)の花粉症では花粉に対し過敏に反応し、花粉を鼻に入れたくないので鼻水で花粉とトラップし、鼻粘膜が腫れて鼻づまりを来します。咳喘息では咳で出そうとするし、痰が出ます。喘息では気道が詰まってしまうのです。

このように気道が過敏に反応することで咳や痰からみが起こるのが咳喘息です。

※2.咳喘息は梅雨に悪くなるの?
梅雨や雨では気圧変化や気温の変化が大きく、咳喘息や喘息では咳や痰がらみが悪化、特に夜間に悪くなることが多いです。台風で悪化することも少なくないですが、不思議なことに台風が沖縄辺りにいるときに悪化することが多いです。おそらく気圧の変化があるのだと思います。本症例のように朝や夜に悪化する(日内変動)、例年同時期に咳が遷延する(年内変動)といった症状の変動が大きいのが特徴です。

※3.天候と悪化とともに出現する眩暈(めまい)や頭痛

本例と関係ありませんが雨などで天候悪化と共に眩暈や頭痛を訴える患者さんも少なくありません。漢方医学的には天候悪化と共に悪化する病態を”水毒”といい、体質的に水分の多い人がしばしば悪化します。水を調整する五苓散や半夏白朮天麻湯で頭痛や眩暈がよくなることを経験します。

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