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このままだと”新型コロナ感染は感染爆発(オーバーシュート)”してしまう…どうか家に居てください…

新型コロナ感染(COVID-19)が2019年12月8日中国で初めて”原因不明の肺炎※1”と報告されて以降、世界中でパンデミックを起こし(3月12日パンデミック宣言(WHO))、世界中で猛威を奮っています。果たして日本では更なる大流行、更に医療崩壊を起こしてしまうのでしょうか?感染爆発、医療崩壊とはどんなことが起こるのでしょうか?

呼吸器内科専門医、感染症専門医としてクリニックをしている一医師として、現在の心境を述べたいと存じます。

 

※1.「原因不明の肺炎」のという言い方は実は正しくありません。肺炎の原因菌は一般的には細菌(肺炎球菌が一番多い)が多く、ウイルス性肺炎はまれです。武漢で稀なウイルス性肺炎が集団発生したことで、新種(つまり原因不明)の肺炎(pneumonia of unknown etiology (unknown cause) in Wuhan City)として報告されました。

世界の医療先進国では既に一日500~700人もの死亡者数を出しています…日本だけが大丈夫だと考えるのは楽天的すぎると思います

 結論から申し上げますと私はこのままの対策では、「日本も2~4週間で大流行に突入し、感染者数千名/日…医療崩壊…死亡者数数百名/日…という感染爆発」になるだろうと覚悟しています。医療者として普段過激な言葉を避けるようにしていますが、今回の新型コロナ感染は非常に警戒しなければならないと思います。

 世界の医療先進国も軒並み新型コロナの流行を余儀なくされ、新型コロナ感染死亡者数はこの1週間で5万人から10万人になりました。米国など医療先進国でも1日に500~1,000人死亡者数が出るなど甚大な被害が出ています(左図)。日本の新型コロナ感染者数は海外より低く抑えられおり(右図)、海外と違い「休業規制」や「外出制限」をすべきでない、そんなことをしたら「失業してしまう」「日本の経済が破綻してしまう」と考える方も少なくないようです。

 

しかしニューヨーク市も新型コロナ感染者の入院患者は3月17日にはわずか25人だったのが、27日には1,000人にも達した(下図参照)ようです。何故日本が感染者数の増加を抑えられたのでしょうか?クラスター対策が優秀だとか、日本人はマスクや手洗い習慣があるからとか、BCG接種率が高いとか、世界中でいろいろ推察されていますが未だ不明です。一つは「日本ではPCR検査数が少ないので実際はもっと患者数が多いだろう」とは思われてますが、3月中旬まではPCR陽性率が5%程度であったことを踏まえると、それほど検査数を増やしても患者数が増えるとは思えませんでした。3月まではそれほどコロナ感染はまん延していなかったと思います。

今までの感染対策が限界に来ています…2~3週間後オーバーシュートを起こす…

東京都における新型コロナ感染者数は日に日に増加しています(下図)。これは単にPCR検査数が増えたからでしょうか?確かにPCR検査数も増えていますが、ここで注目すべきは「PCR陽性率」と「感染経路不明者率」の増加です。

 

3月(PCR陽性率5%前後)はPCR陰性者(コロナ患者以外)が大多数を占めておりましたが、4月に入り「PCR陽性者(コロナ患者)」が多くを占めるようになり、また「感染経路不明者数」も明らかに増加傾向です。「PCR陽性率増加」は新型コロナ感染のまん延を、「感染経路不明者数増加」はクラスター対策が難しくなってきたことを示していると思われます。尚、潜伏期が4~10日であり、PCR検査結果に数日要することを考慮すると、3月下旬には感染のまん延が加速化し、感染制御できなくなったと言えます。

 

新型コロナ感染対策はどうやるか? ~各個人で出来ること~

 元々コロナウイルスは風邪の原因ウイルスであり、新型コロナウイルスも発症初期(1週間以内)は感冒症状を来し、80%は自然軽快します。しかし、発症4~8日目には肺炎20%、死亡2~3%を合併し、強い病原性を持っています。軽症例※2の中にも入院不要なものの倦怠感の強いインフルエンザ様症状の症例もかなり含まれそうです。

 新型コロナ感染がいかに恐ろしい感染症としても、ウイルスがそこかしらの空気中をさまよっているわけではありません。咳やくしゃみでウイルスはヒトから排出し、飛沫(ひまつ)やそれで汚染された手を介して、「目や鼻、口」から体内に侵入して感染します4)。新型コロナ感染対策としては、飛沫は1~2mしか到達しないので人と密接空間に会わないこと、手指消毒が大切です。新型コロナ流行地で働くNY(ニューヨーク)の医師が以下の4つが大切と言っています(4)題名”NYのドクターが発見したコロナに感染しない4つの法則”と言うほど新しいことではありませんが簡潔でとても分かりやすくこのY-tubeは推奨します)。

①「何かに触れたら手を洗う」

 コロナウイルスは石鹸やアルコールで壊れるので、石鹸やアルコール消毒で手指消毒してください。特に指先や親指は洗い残しが多いので、20秒以上かけててちゃんと洗ってください。アルコール消毒は殺菌性が高く頻回に手指消毒を必要とする医療従事者は必須ですが、石鹸(石鹸でコロナウイルスの外殻は壊されます)と流水20秒で十分です。

②「手(※3)を顔にもってかない」

コロナウイルスは環境表面にしばらく残ります。吊革やキーボード、ドアノブ、携帯電話に付いたら2~3日も残るのかも知れません(下図)。手を介して自分の「目や鼻、口」から接触感染します。NY医師は特に大事と強調しています。

 

③「マスクをする」

 飛沫から守るよう「鼻や口」を覆うマスクは有用だと思います。くしゃみや咳で排出されたエアロゾルは3時間も空気中に残存する可能性があるので閉鎖空間にならないよう換気も大切と思われています。しかしマスクやアルコール消毒液の買い占めは厳に止めてください。医療現場では既にマスクや個人防護具、アルコール消毒液の不足が深刻化しています。今後なくなった場合は院内感染は不可避になるため診療拒否する医療機関も出て、医療崩壊が加速化してしまいます。

④「人に会わない」

 3密※3(閉鎖空間、密接空間、密接場面)を避けることがが推奨されていますが、「人に会わない」ことが最も有効で確実な予防法です。

 

 

※2.若年者は死亡率は少ない(0.2%;死亡例散見)とされていますが、肺炎20%も起こす、インフルエンザ様症状も少なくない、高齢家族が罹患すると高い死亡率(14%)を伴うことを肝に銘じる必要があります。

※3.新型コロナウイルス感染をしやすい3つの条件(①換気の悪い「密閉」空間 ②多くの人が「密集」③近距離での会話や発声(

「密接」場面))を避けることが推奨されています。米国/英国ではSocial distancing(人と距離を取る⇒人混みを避ける),Stay home(自宅に居なさい)と言われます。

オーバーシュート(感染爆発)は起こるのか?

 日本でオーバーシュート(感染爆発)は起こるのでしょうか?

 いよいよ4月7日緊急事態宣言が発令され、「人と人との接触を80%削減する」ことを念頭に国民に自粛の強化や休業を求めました。また厚生労働省クラスター対策班のメンバーの西浦教授は「今のような外出自粛のお願いだけでは接触は2割ほどしか減らせず、8割削減するにはヨーロッパに近い外出制限が必要になり、国や自治体は早急に対策を打ち出すべきだ。」と厳しい行動制限がなければ暗い見通しを述べています。

このままだと2~4週間後には感染爆発が生じ、「1日数千人の感染者、数百人の入院患者」「医療従事者の感染、死亡」既に医療現場は混乱してますが「医療崩壊」、さらに「1日数百人の死亡者」ということが現実化し、それが数か月続きます。海外ではそれが現実に起きているのです。「新型コロナは戦争被害だ」と表現する国も少なくありません。決してこれを日本で起こしてはいけません。「日本の医療は高レベルだから医療崩壊になんてならない?」なんて思う人もいるでしょうか?私も日本の医師の多くは豊富な知識を持ち、看護師他職員も新型コロナ感染に勇敢に立ち向かうと思います。しかし日本は欧米諸国に比してICUベッド数は少なく(10万人当たり5床、ドイツ30床、イタリア12床)、人工呼吸器、またそれに精通した医師・看護師も不足しています(日本集中治療医学会理事長の4月1日の声明)。もし医療従事者一人が新型コロナ感染に罹(かか)れば、多数の院内感染も来しその病院は閉鎖されます。むしろ日本は、容易に医療崩壊は来すと思います。そして新型コロナ以外の治療も滞(とどこお)り、それで救われなくなる方も増えてしまいます。それが医療崩壊です。

日本はきっと感染爆発や医療崩壊は起こらないだろうと思っている方も少なくないかも知れませんが、例え起こる可能性が10~20%※4であっても「戦争被害」は絶対に起こってはならないのです。

※4.10~20%も確率が低いのなら、大事な仕事は休めない真面目な方は少なくないと思います。しかし次のような内容ならどうでしょうか?

例えば医師から「”肺がん(あるいは都知事からこのままだと日本は戦争になる)”の可能性が10~20%です。今は症状がありませんが、肺がんになる(戦争が勃発される)と1か月後には手遅れになりますが、今検査をして手術(対策)をすれば80%以上助かります。1か月間仕事は出来ませんがご自身の命のため、ご家族のためにじっくり治療(自宅静養)に専念しませんか?」と説明を受けました。新型コロナ感染によって世界中で大事な家族を失っている方が沢山います。今はぜひ危機感を持って万全な対応をしていただきたいと思います。

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