咳はいろいろな病気で見られますが違いがあるのでしょうか?
咳は非常にありふれた症状です。
咳は咳でも風邪や肺炎などではどう違うのでしょうか?
風邪や肺炎、結核などはどんな症状の違いがあるでしょうか?
風邪では「鼻水」「のど痛み」「咳痰」と「発熱」がみられ、1週間程度でよくなります。
あるCMで「せき、のど、はな」に〇〇が効く、がありました。
風邪とは風邪ウイルスが原因で起こる“上気道感染症”※1です。
”上気道”とは「鼻、のど、気管」のことで、これらの症状と共に”感染症”でみられる「発熱」がみられます。風邪を例えるなら”コソ泥”といった感じで、体の入り口ですぐに見つかって追い出されるイメージで、3~7日ほどで改善します。
では肺炎や結核、肺がん、咳喘息ではどう症状の違いがあるのでしょう?
「痰が多くて、膿性」、「高熱が続く」、「風邪にしては具合が悪い」といったときには肺炎を疑います。肺炎は上気道よりも奥である肺(下気道とも言います)が病原体にやられます。上気道である鼻やのどの症状はあまりなく、「咳」や「痰」が主体です。体の奥をやられるだけあって症状は強く、風邪よりも病気は重く、下気道症状(咳痰)がよく見られます。例えるならもっと体内に入るので”強盗犯”みたいな感じでしょうか。
「治らない肺炎」「治らない発熱」では結核を念頭に置かねばなりません。弱い人がかかりやすく少しずつ体を消耗させるので“たちの悪い借金取り”みたいでしょうか。あまり高熱など強い症状はなく慢性的な経過を来すことが多く、抗生物質などでは治りません。
2~3週間も咳が長引く場合には肺がんを必ず除外しなければなりません。肺がんはまさに”暗殺者”で、体の中で静かに進行し、気づいたときには致命的なのが”がん”の恐ろしいところです。咳で受診される患者さんの中には「自分は”肺がんでは?”」と心配で受診される場合がありますが、ひどく恐れる必要はありません。幸い肺がんの頻度は少なく、一般に検診患者の2,000~5,000に一人程度です。
咳喘息は長引く咳では最も多い病気ですが、いくつかの特徴があります(※2)。もうウイルスは気道(受付)に居ないのに過敏に反応してウイルスを排除しようと咳が続く状態で、”受付が大騒ぎ”といった感じでしょうか。咳喘息はいわゆる気道のアレルギーです。アレルギーは日本語訳すると”過敏症”であり、風邪をひいて1週間もすると風邪ウイルスは体から排除されて治るものですが、咳喘息患者では過敏でそれ後も気道に入れたくないために「咳が長引く」のです。過去にも風邪の後に咳が長引いた経験のある患者さんは咳喘息であることが少なくありません※2。
※1.風邪ウイルスが体に入ったらどうやってやっつけるの?
家に強盗が入ってきたら?といった状況に似ています。
① 強盗を追い出す、②強盗が中に入らないようにする、③強盗と戦う、④警報を鳴らすと
いった対応をすると思います。風邪は体の入り口である上気道にウイルスが侵入し、「鼻」「のど」「気管」で戦い(感染症)が起こる病気です。
① 鼻から出そうと「くしゃみ」、のどや気管から出そうと「咳」をする
② 分泌物でウイルスを動けなくする:「鼻水」「痰(たん)」
③ 戦場では”戦火(炎症)”が起き、「鼻炎(鼻水、鼻痒み(かゆみ))」、「咽頭炎(のど痛み)」
、また全身の影響で「発熱」といった症状を来します。
そこで「風邪らしい」症状とは鼻、のど、気管の炎症の結果「鼻水」「のど痛み」「咳痰」「発熱」です。
※2.咳喘息でみられる特徴
気道が過敏なため些細な刺激で咳がでるため、会話や室温の変化、煙など様々な状況で咳は悪化するため「よくなったり悪くなったりする」ことが少なくありません。
日内変動 | 夜間や朝に悪化 |
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週内変動 | いい日や悪い日がある |
年内変動 |
ある季節に咳がでるのは咳喘息を疑う 季節変わり目、台風、花粉などで悪化 |
風邪 | 風邪の後3~7日に咳喘息に移行することが多い |
台風 |
東京でなくむしろ沖縄辺りの台風があるときに悪化しやすく、今年は9月末~10月は悪化した患者さんが非常に多かったです |
埃(ほこり) |
衣替えや引っ越し、大掃除を契機に悪化する患者さんは多い 埃の暴露30分後に悪化するので、掃除開始後少し疲れた頃少し咳がでる、痰がらみをするといった症状が見られます |
花粉 |
「花粉の時期にしばしば咳がある」方は咳喘息を強く疑う |