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”雨が近づくと起こる頭痛”に五苓散

昔から「天候や季節によって悪くなる症状がある」ことは知られてました。

東洋医学では「人は自然界の一部」であり、「季節や天候などの様々な環境の変化と調和がとれていることで生きており」、その調和が乱れると体調を崩すと考えられています。

 

「雨が降ると頭痛がする」のは元々水分を貯めやすい体質の人になりやすく、しばしば「足が浮腫(むく)みやすい」、「車酔いしやすい」などの傾向があります。

梅雨など雨の多い季節は脳が浮腫(むく)んで頭痛になると考えられ、水分バランスを調整する漢方薬(五苓散※2)がしばしば効きます。

このように”水が悪さ”をする病気は「水毒(すいどく)」※1(または「水滞(すいたい)」)と言います。

※1.水毒の主な症状

身体の約60~70%は水であり、体にとって水分バランスはとても大切です。水分バランスの失調はあらゆる症状を来し、水毒といいます。

典型的な水毒は”二日酔い”です。お酒なら1-2Lも大量に飲めてしまう方はいますが、飲みすぎた翌朝には二日酔いで「顔は浮腫み(むくみ)、しばしば頭痛や嘔吐」が見られます。大量に飲みすぎた水分の過剰摂取に水分バランスの調整が追い付かず、水毒を起こしてしまいます。

水毒(水滞)の症状は以下のようなものがあります。

症状

体のどこかに水が滞って症状を来しえます。

頭     :頭痛、眩暈(めまい)

鼻~気管      :鼻水、痰、喘鳴

胃腸    :嘔吐、水様下痢

関節    :関節痛、こわばり

全身    :浮腫(むくみ)、重だるさ、口渇(こうかつ)

特徴

雨の日に悪化しやすい

車酔いなど眩暈(めまい)を起こしやすい

また水分調整がうまくいかず、下痢や尿がたくさんあるのに”口渇(喉が渇くこと)”という症状がしばしば見られます。

※2.五苓散は「雨の前日に悪化する頭痛」の90%に有効と下記文献に示されています。また雨の前日に頭痛が「悪化する人」の有効率は「(雨の前日に)悪化しない人」に比して16倍でした1)。細胞間の水分調節は細胞膜に存在する穴(アクアポリン)を介しており、五苓散はこのアクアポリンの開閉を調整して水代謝を正常化しています2)。脳細胞にはアクアポリンが非常に多く、脳外傷や脳梗塞後の脳浮腫にも五苓散が有効なことが近年注目されています。

 

参考文献:

1)灰本元他:慢性頭痛の臨床疫学研究と移動性低気圧に関する考察(五苓散有効例と無効例の症例対照研究)Φυτο1(3):4-9,1998.

2)磯濱洋一郎:五苓散の利水作用ーアクアポリン機能調節.薬学雑誌. 126(supple 5):70-73,2006.

3)井齊偉矢:西洋医が教える、本当は速攻で治る漢方 SB新書.

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