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天候悪化と共に体がだるくて重い、頭痛や吐き気がする…

梅雨の季節には眩暈(めまい)や頭痛などが悪化しやすく、漢方薬が有効なことがあります。 今回は天候悪化と共に頭痛や眩暈(めまい)来した症例を紹介します。

患者 20歳代 女性
主訴 気分不快(体がだるくて重い感じ)
既往歴 もともと胃腸虚弱でお腹こわしやすい
経過

3-4年前から何となく体がだるくて重い、気分不快になることがある。疲れると夕方に体調が悪くなる。

天候の悪い日は頭痛や立ちくらみをしやすい。

X年6月初旬急性胃腸炎で初診した際上記を相談し、漢方治療を試したいと再診した。

結果 半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)開始、2週間後本人談「この数年間で一番調子いい」。
6週間後体調はさらに改善し、28日分処方し終診となった。
まとめ

気分不快には様々な原因があるが、

本症例では「体のだるくて重い」「天候悪化と共に頭痛、眩暈(めまい)」症状から、

漢方医学的に “水毒※1”を疑った。水を調整する漢方薬でよくなることをしばしば経験します

診断(漢方医学では”証(しょう)”と言います)

水毒(すいどく)※1、脾虚(ひきょ)※2

現代的に訳すと「胃腸虚弱(=脾虚)」による水調整がうまく出来ず、「頭に水が貯まった状態(=水毒)」となります。


※1.水毒(すいどく)とは? 水が多過ぎて悪さすることです

 

人にとって水は必要不可欠なものですが、とり過ぎると体がだるく重い、浮腫み(むくみ)、眩暈、嘔吐、下痢など様々な症状を来します。西洋医学では心不全や腎不全などでみられる浮腫や胸水、水分過剰摂取の水中毒に相当しますが、そのような病気はなくとも同じような症状も来す人たちがいます。つまり水分を貯めやすい体質で、普段から体がだるくて重い、浮腫みやすい、乗り物酔いしやすく、しばしば天候悪化や水のとり過ぎなど悪化する人たちです。漢方医学では水分の貯め過ぎが悪さをした (水が毒をもった)、という意味から“水毒”と考え、1000年以上前から水を調整する漢方薬が使われていました。例えば、天候と共に悪化する頭痛や眩暈(頭や耳に水が貯まって悪さをする)、二日酔いの頭痛や吐き気、浮腫みなどは水毒です。

 

※2.脾虚(ひきょ)とは胃腸虚弱です

体の約60%は水分で不可欠ですが、水は多過ぎても少なすぎても困ります。高温多湿や寒冷乾燥など移り変わる環境の中、毎日人は水をとり、汗や尿を出して、水分を調整して生きています。水分を吸収する胃腸が弱い人(漢方では”脾虚”という)や水分を出す汗・尿の調子の悪い人は水分調整がしづらく、体調を崩しやすい傾向にあります。例えば運動不足で汗のかかない女性はしばしば水太りしやすく、夏バテしやすい傾向にあります。また皮膚がカサカサのお年寄りは水分が少なく、乾燥する秋の季節には皮膚が痒くなることが少なくありませんん。漢方医学では天候と共に悪化する病態を”水毒”といい、体質的に水分の多い人がしばしば悪化しやすいとしています。高温多湿の日本では水毒は多いと思われています。本例では胃腸虚弱(脾虚)で浮腫みやすく、天候悪化と共に頭痛や眩暈を来していることから”水毒”と考え、胃腸を丈夫にしながら水を調整する半夏白朮天麻湯を処方しました。