漢方のブログ

Kampo Blog

秋は乾燥しやすく、咳や皮膚かゆみが出やすくなります…

秋は乾燥しやすい季節であり、皮膚だけでなく、口や喉が渇きやすくなります。

古くから東洋医学では「人は自然界の一部」であり、「季節や天候などの様々な環境の変化と調和がとれていることで生きており」、その調和が乱れると体調を崩すと考えられています。乾燥しやすい秋※2は身体の水分が失われやすく、皮膚乾燥による痒み(かゆみ)、喉乾燥感、乾咳(からせき)が出やすいと言われています。

患者1 60歳代 女性
主訴 3年以上続く咳
既往歴 高血圧症、高脂血症、慢性胃炎
経過

3年前の春から咳がしばしば続き、他院で鎮咳薬他無効だった。大学病院呼吸器科で精査も特に異常はなかった。季節変わり目に咳悪化しやすい、血液検査で好酸球軽度増加から咳喘息疑いで吸入薬治療2年間使用も効果なかった。

咳は一日中出て、温度差や会話で咳は出やすい(痰/鼻水なし)。

結果

慢性咳(2か月以上、胸部X線異常なし)を来す病気は咳喘息、逆流性食道炎、鼻炎合併等あるがそれぞれ治療も無効だった。「喉乾燥感(喉カラカラ、咳が出る)が強く、潤す(うるおす)と咳が止まる」ことから肺乾燥が主因と考え、麦門冬湯(ばくもんどうとう)開始、2週間後本人談「この数年間でこんなに改善したことはない。まだ少し咳残っているがあと2週間ですっかりなくなりそう」とのことで14日分処方し終診となった。

まとめ

咳には様々な原因があるが、西洋医学には乾燥で咳を出るという発想はなく薬がない。

本症例では「喉乾燥感」「潤すと咳が収まる」症状から、漢方医学的に “津液不足※1”を疑った。漢方では秋は乾燥して肺が悪くなるといわれる。

患者2 50歳代 女性
主訴 2か月続く咳
既往歴 副鼻腔炎、アトピー性皮膚炎、高脂血症
経過

10月初旬風邪らしい症状はなく時折乾咳(からせき)出現、会話を長くしているとむせるような咳が出てしまう。

結果

慢性咳(約2か月、胸部X線異常なし)で西洋医学的には咳喘息、逆流性食道炎、鼻炎合併等を考慮しうるが、「喉乾燥感(喉カラカラ、咳が出る)があり、潤す(うるおす)と咳が止まる」ことから肺乾燥が主因と考え、麦門冬湯(ばくもんどうとう)開始、数日で咳は軽くなり2週間で8割改善した。

まとめ

本症例は呼気NO 22ppb(やや高値)であり咳喘息も考えうるが、麦門冬湯はNO産生抑制して咳喘息にも効果があるとされている。

本症例では「喉乾燥感」「潤すと咳が収まる」症状から、漢方医学的に “津液不足※1”を疑った。

秋から乾燥し始め、今年は10月末から「乾燥による咳」も増えたように思われます。

※1.津液不足(しんえきぶそく)

身体の約60~70%は水であり、体にとって水はとても大切です。血液以外の体内の水分を東洋医学では津液(しんえき)と称し、水分が多すぎる病態を水毒(すいどく)、少なすぎる病態を津液不足(しんえきふそく)といいます。

 

津液不足の症状は以下のようなものがあります。

水分不足は主に体の入り口(口喉乾燥や嗄声、乾咳(からせき))や出口(便秘)がよく見られます。

症状

体のどこかの水分が不足して症状を来しえます。

喉~気管  :喉乾燥感、口渇(こうかつ)、嗄声(させい;声枯れ)、

         乾咳(からせき)、痰が少なく切れにくい・喉に張り付く感じ

胃腸    :口腔乾燥、胃痞え(つかえ)、便秘

※さらに重症になると、眩暈(めまい)、不眠、健忘、やせ、ほてり、寝汗

特徴

口を潤したくなる(よく水分をとる、飴をなめる)

潤すと症状が良くなる

秋は乾燥しやすく津液不足を来しやすい季節とされています。

※2.秋は乾燥の始まり

 東洋医学では季節の移り変わりと共に悪化しやすい病態があり、春は気の異常(気持ちが乱れやすい)、夏は熱中症や熱性下痢、秋は乾燥症状、冬は冷えや寒邪(ぞくぞくする風邪)が多いとされています。東京の湿度は10月より下がり始め、今年は11月下旬から乾燥注意報が発令されるようになりました。今年は麦門冬湯を処方する喉乾燥感を伴う乾咳(からせき)の患者さんは10月下旬より増加しているように思います。また寒い季節になり皮膚も乾燥しやすく痒みを訴える際には当帰飲子(とうきいんし)が効くことが少なくありません。