漢方のブログ

Kampo Blog

漢方医から伝えたいこと vol.2 ~実と虚~

とうとう新型コロナの新規感染者数がまた増えてきてしまいました。

前回のブログ(「漢方医から伝えたいことVol.1」)では、感染症治療における西洋医学と漢方医学の違いについて書きました。西洋医学は病原体を直接死滅させる治療が中心で、漢方は免疫を調整する治療です。今回は漢方がどのように治療をするかについて説明しますね。

症状の違いは免疫反応の違い

インフルエンザが家族内ではやったとき、人によって症状に違いがあることは珍しくありません。例えば、子どもは38度の発熱と鼻水、父親は40度の高熱や頭痛と関節痛、祖母は37度程度の微熱で寒気が強くぐったりといった具合です。同じウイルスなのに、どうしてこんなに違うのでしょうか? 

それは、これらの症状がウイルスが直接起こしているのではなくウイルスを排除しようと働いている免疫による症状であり、人により体の免疫反応が異なるからなのです。

漢方の診断

私たちの体は体内に入ったウイルスや細菌(病原体)を死滅させようと、免疫の働きによって発熱物質を出します。先ほどのインフルエンザの家族では、父親は高熱で、ウイルスが死滅され治癒も早いのですが、発熱物質によって頭痛や関節痛などの痛みが強く、一方微熱で痛みの症状がない祖母は長引くことが多いのです。このような免疫の反応は個人の違いだけではなく、病原体の毒性の強さによっても違います。また、いつも元気な人でも、疲労しているときは異なった弱い反応になることもあります。このように、人によって、あるいはその日の体調によって、または病原体の毒性によって異なる免疫反応を的確に判断することが、漢方の診断になります。

実(じつ)と虚(きょ)


漢方の診断は、いろいろな尺度で細かく分類されています。その中の一つ、実(じつ)と虚(きょ)という分類を紹介しましょう。先ほどのインフルエンザの家族では、父親が実、祖母が虚に当たります。では病原体を排除する力は強いですが、時にそれが過剰になって、逆に重症になることがあります。重症の新型コロナ感染でも「免疫の過剰反応」が原因と知られています。これを風船に例えると、空気がパンパンに入りすぎて(多すぎることを「実」と言います)反発力(免疫反応)が強いですが、ちょっとした刺激で爆発してしまいそうな危険な状態をイメージしてみてください。一方では、病原体を排除させる力が不十分です。風船の中の空気が少なくて(少なすぎることを「虚」と言います)、しおれた風船のイメージで反発力(免疫反応)が弱い状態です。

漢方の治療

風船の理想的な状態はというと、適度に十分な空気が入っている状態ですよね。それは、熱も38度と高くなく、痛みもなかった子どもに当てはまります。最も体に負担が少なく、いわば免疫が理想的に機能して治癒しています。漢方医学では、このように免疫反応が理想的に働くように、「実は免疫反応が強すぎるので免疫の過剰を抑制する治療」、「虚は免疫反応が弱すぎるので免疫を補助する治療」をするのです。ちなみに、普段元気な子どもがインフルエンザにかかったとき、大人に比べて頭痛や関節痛の程度はとても少ないです。それはどうしてでしょう?

次回に続く・・・